大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和35年(ワ)4658号 判決 1962年3月15日

判  決

東京都町田市本町田一、五二〇番地

原告

前田庄八

右訴訟代理人弁護士

大島正恒

東京都中野区鷺宮一丁目二六八番地

被告

三和興業株式会社

右代表者代表取締役

山崎哲

右訴訟代理人弁護士

窪田澈

右当事者間の昭和三五年(ワ)第四、六五八号株主総会決議無効確認請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立。

原告訴訟代理人は、「被告会社の昭和三三年一〇月一六日の株主総会においてなした、(一)取締役前田庄八、同高橋秀彰を解任する。(二)監査役鎌田鉄蔵を解任する。(三)山崎哲を取締役に、村松義定を監査役に選任する。との決議は存在しないことを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、

被告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求めた、

第二、当事者双方の主張。

一、原告訴訟代理人は請求原因として、

(一)  原告は、被告会社の設立された昭和三三年三月六日当時二、五〇〇株の株主であつたが、後に株式の譲渡を受けて四、六〇〇株の株主となり、次いで一五〇株を訴外高橋秀彰に譲渡したので、現在四、四五〇株の株主である。但し被告会社の株券は未発行である。

(二)  被告会社は昭和三三年一〇月一六日臨時株主総会を招集し、取締役前田庄八、同高橋秀彰を解任する。監査役鎌田鉄蔵を解任する。山崎哲を取締役に、村松義定を監査役に選任する。との決議をしたとして、同年一一月二六日その旨の登記手続をした。

(三)  原告は当時被告会社の代表取締役であつたが、右株主総会を招集したことはなく、仮に何人かが株主総会招集通知をしたとするも、原告は同年一〇月一四日各株主に対し代表取締役名義をもつて右招集を取消す旨の通知をした。

(四)  よつて同月一六日の被告会社の臨時株主総会の決議は存在しないから、これが確認を求めるため、本訴請求に及ぶと述べ、

二、被告訴訟代理人は答弁として、原告主張事実中、原告が被告会社設立当時二、五〇〇株の株主であり、その限度において現に株主であること、被告会社の株券が未発行であること、昭和三三年一〇月一二日当時原告が被告会社の代表取締役であつたことは認めるが、その余の事実は否認する。被告会社は同年九月二九日午後一時取締役会を開催し、右取締役会において取締役前田庄八、同高橋秀彰、監査役鎌田鉄蔵を解任し、新たに取締役及び監査役を選任するための臨時株主総会を招集することを満場一致で決議し、代表取締役であつた原告の委任に基き、取締役篠田知秀、同鈴木幸江両名において原告名義の株主総会招集通知を作成のうえ各株主にその通知を発し、同年一〇月一六日本件臨時株主総会を開催し、同総会において原告主張の決議をしたものである。仮に原告において本件株主総会の招集を取消す旨の通知をしたとしても、右取消は取締役会において先に決議した本件株主総会の招集を取消す旨の決議に基ずくものではないから、右取消は無効であると述べ、

三、原告訴訟代理人は、被告の右主張事実中、被告会社が昭和三三年九月二九日取締役会を開催したこと並びにその後取締役会において本件株主総会の招集を取消す旨の決議をしなかつたことは認めるが、その余の事実は否認すると述べた。

第三、立証(省略)。

理由

原告が被告会社設立当時二、五〇〇株の株主であつて現に被告会社の株主であること、被告会社が昭和三三年九月二九日取締役会を開催したこと、原告が同年一〇月一六日当時被告会社の代表取締役であつたことは当事者間に争いがない。

(証拠)を綜合すると、昭和三三年三月六日原告、訴外波田野了、同矢沢富美人、同村松イト、同鈴木幸江、同篠田知秀、同戸辺清次郎、同大野海蔵及び同鎌鉄蔵ら九名が株主となり、当時千葉県野田市に建設中の映画劇場において映画興業をなすことを主たる目的とし、資本の額五〇〇万円、発行済株式総数一万株とする被告株式会社を設立(発起設立)し、原告が取締役兼代表取締役に、波田野、矢沢、村松、鈴木、篠田、戸辺、大野が取締役に、鎌田が監査役に就任し、原告において被告会社の運営にあたつてきたが、右劇場の建設資金に不足が生じたので、被告会社は資金導入のため訴外高橋秀彰を取締役に選任するとともに、前記篠田、矢沢、鈴木らの株主から右建設資金の融通を受けることとなつた。しかるに右資金の運用等につき原告、高橋、鎌田らに不審の点があつたので、篠田、村松両名は被告会社の業務執行方法等について審議すべく取締役会を招集し、同年九月二九日取締役会を開催し、右取締役会において原告、高橋、鎌田らの責任を追及するとともに同人を解任して後任役員を選任することとし、右解任及び選任を目的とする臨時株主総会の招集を決議したこと、これより先被告会社の運営につき責任を感じ会社の印鑑帳簿類一切を篠田に提供していた原告は、右取締役会の席上右臨時株主総会招集の手続を篠田に委任したので、同人はこれに基き代表取締役としての原告名義の株主総会招集通知書を作成のうえ、これを原告、大野、戸辺、波田野、鎌田らの株主に発し、同年一〇月一六日本件株主総会を開催したこと、右総会には委任状による出席者(篠田、矢沢両名)をも含めて右大野、戸辺の両名を除く全株主七名及び高橋(但し同人が被告会社の株主でないことは後記認定のとおりである。)が出席したこと、総会の議案審議に入るに先だち、独り高橋は被告会社の資金運用につき自己に不正の事実がなかつたことを弁明したが、篠田、矢沢両名の代理人として出席した訴外窪田澈の聞き入れるところとならず、殊に同人から原告、鎌田は本件総会の決議につき特別利害関係人として議決権を行使することができない旨告げられたので、高橋、鎌田、原告の三名はこれを不満として本件総会議場より退席したこと、そこで残留株主五名にて議事を進行し、取締役である原告及び高橋、監査役である鎌田を解任し、訴外山崎哲を取締役に訴外村松義定を監査役に選任したことが認められる。(なお原告は、被告会社設立後株式の譲渡を受けて四、六〇〇株主となり、次いで一五〇株を高橋に譲渡したと主張するけれども、被告会社の株券が未だ発行せられていないことは当事者間に争いがなく、株券発行前の株式の譲渡は会社に対しその効力を生じないから、原告は依然として二、〇〇株の株主であり、高橋は被告会社の株主でないものと認める。)(中略)他に右認定を覆すにたる証拠はない。

原告は代表取締役として昭和三三年一〇月一四日本件株主総会の招集を取消す旨の通知を全株主に発したから、本件総会は不存在であると主張し、証人鎌田鉄蔵、同波田野了及び原告本人の供述によれば、鎌田鉄蔵において原告代表取締役名義をもつて本件総会招集取消通知書を作成のうえ、これを株主波田野に通知したことが認められるようであるが、右総会招集の徹回が取締役会の決議に基つかなかつたことは原告においてこれを自認するところであつて、一代表取締役が取締役会の決議に基き株主に対し株主総会の招集通知を発した後に右のような徹回をすることは違法といわなければならないだけでなく、右供述によって、かかる取消通知を作成したと目される鎌田及び原告、右通知を受けたと供述する波田野らはすべて本件株主総会に出席し、殊に波田野は本件総会の決議に加わつたものであることは前段認定のとおりであつて、右事実に照して、原告主張事実はにわかに措信できず、仮に右主張のような取消通知書が作成されたとしても、右通知を全株主に発したことを認めるに足る証拠はなく、却つて証人篠田知秀、同矢沢富美人、同鈴木幸江の証言によれば、同人らは原告主張のような招集取消通知を受けなかつたことが認められる。

以上認定の事実に徴すれば、本件株主総会が被告会社の株主総会として認められず、その決議は法律上存在しなかつたものということはできないから、右決議の不存在確認を求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第八部

裁判長裁判官 長谷部茂吉

裁判官 玉 置 久 弥

裁判官 白 川 芳 澄

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例